文:KAIKO
ビーズ:NAGOMI
キモノとビーズの
小粋なカンケイ
vol.4
design:NAGOMI
profile
伊藤まゆ

昭和46年、高知県生まれ
結婚前は美術関連書の出版社に勤務
現在主婦、ときどき着付け教室開催
長沼静きもの学院で、師範免状取得
きもの歴3年と半年の新米です

かいこさんのきもの教室
お稽古日 相談・予約制
料金 2時間 2000円
内容 個人の希望に合わせた着つけ
場所 自宅(宮崎県)
   出張可


     
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■vol.1「春の怪」
■v0l.2「夫婦」
■vol.3「スコール」

『幸福を運ぶひと』
 わたしに福を運んできてくれる人。それは、夫のつぎに、よく顔を合わせる男性であ
る。
 彼は時々うちに来る。来なくても大抵近くにいる。一日一回は彼を見る。角を曲がる
とバッタリということもある。
 彼は、たくさんのひとに福を届けなければならない。
 夏場はしぼるような汗である。キャップからはみでた髪の毛から雫をしたたらせ、汗
でシャツがはりついた背中を向けて早足で帰っていく。
 私は、涼しいところから出てきてチョンとハンを押すだけ。ただもう一途にありがと
うの思いでいっぱいになる。
 ある日、大学の構内を突っ切って駅へ向かっていたら、彼と行き違った。
 彼はアッという顔をして、車を停め、外へ出てきた。「いとうさん」と呼ぶのである。
今から届ける荷物があったのだけど、いつ帰りますか、と。僅か2〜3メートルの距
離を、車から降り、駆け寄ってきてそう問う。電車に乗っても「いとうさん」と呼ぶ彼
の声が残った。
 福を届けてくれる人は彼だけではないが、いとうさん、と発声するのは彼だけである。
たとえば、留守で福を受け取りそこなった時。彼の携帯に電話をして、住所を言い、
名乗る前に、決まって彼は「ああ、いとうさん」と言う。その声を聞くと、私は、福を
送る人も受け取る人も大切にされていると信ずることができるのである。彼に、私の福
は守られている、と。
 彼の届けてくれる福の定期便は、田舎の海の幸や山の幸。季節の風。親の思い。
 福とは、いつでも、ひとの気持ちのことであるように思う。
 だから、届いた福には、彼も入っているのである。

藍の紬に縞の半幅、格子の羽織
 羽織はおばあちゃんの黄八丈
 チャキチャキの江戸風が
 ビーズの羽織紐と指輪で
 ちょっとまるうくなるような・・・
 角のとれた女性になるような・・・